Web制作において、どうやればもっと効率的にプロジェクトを進められるだろうか?クライアントやデザイナーさんたちともっとうまくコミュニケーションがとれないものか?どうすれば無理なくスケジュール通りに進行できるだろうか?そもそも、なぜトラブルが起きてしまうのか?ディレクターとして、どうにもうまくいかないなー、と、日々悩んでいるときに出会ったのがこの「Webプロジェクトマネジメント標準-PMBOKでワンランク上のWebディレクションを目指す」でした。
Web業界で関心が高まりつつあるプロジェクトマネジメントのノウハウをまとめた書籍です。ワンランク上のスキルを身につけたいと考えているWebディレクターさん必携! プロジェクトマネジメントの世界標準「PMBOK」をベースに、Webのプロジェクトで必須のフレームワーク、優れたプロジェクトマネージャになるための心構えをばっちり解説します。実用的なテンプレートも収録。これで明日からのプロジェクト進行が改善されること間違いなし!
※Amazon商品説明より引用
「自分が必要としているのはまさにこれだ!」
この本を手に取り目を通して思ったことは「自分が必要としているのはまさにこれだ!」でした。これまで、言ってしまえば手探りのような状態でなんとか形にしてきたこの仕事を、しっかり体系立てて学ぶことができ、そして、文字通りワンランク上のWebディレクションを目指せると強く思えるものでした。
Web制作において必要な分野をしっかりピックアップしてくれている
本書の構成はざっくり以下のようになります。どの章も非常に分かりやすく解説されています。PMBOKそのものを学ぼうとすると膨大な時間が必要になります。Web制作には必要のない分野もあります。その中から、Web制作で必要な分野をしっかりピックアップしてくれているところが、本書の素晴らしいところです。
- 第一章:PMBOKの基本的な考え方
- 第二章:WebプロジェクトにおけるPMBOKの具体的な活用法について
- 第三章:プロジェクトマネージャーの心構えやリーダーシップについて
- 第四章:現場で使えるテンプレート集
ここから先は自分のなかで強く心に残ったところを取り上げてご紹介します。
プロジェクトは、終わりをつくることから始まる
この言葉に非常に感銘を受けました。当たり前のことなんですけどね。でも日々複数の案件を抱えていたり、急な仕事が入ってきたりすると、このあたりが疎かになり終わりの見えない疲れるだけの毎日になっていることが多い気がします。そんな状況をなくすためにも「終わりを作る」をまず初めにしっかりやるべきですね。
終わり(終結)をいかにスムーズに行うか。これがプロジェクトの妙であり、プロジェクト・マネージャーの能力にかかっている命題です。プロジェクトの立上がりはみんな一番気を使い労力を払いますが終わるときはどうでしょうか。あるいは、どうなったら終わるのか明確に定義しているでしょうか。終わりがあるから、人はものごとを計画し進めます。終わりがないと秩序がなくなり、ものごとがだらだらと進められてしまいます。
プロジェクトにおける基本中の基本、三大制約条件を抑える
- コスト(予算)
- スケジュール(時間)
- スコープ(範囲)
この3つを抑えておけば、ほぼトラブルはなくなるでしょう。公開日が絶対にずらせない案件であれば「スケジュール」を最優先した計画を立てますよね。「コスト」や「スコープ」が重要な制約であれば、そこを実現するために他の制約を調整して収まるように計画します。要は、この制約をクライアントともしっかり共有していれば、例え無茶な要求をされたとしても、優先順位をもとに、しっかり交渉することができます。これは非常に重要なことで、制作現場として自信を持って仕事をするための大きな武器になります。守るための防具ともなりますね。
「ここまでやってもらえると思っていた」「自分たちの作業はここまでだと思っていた」がトラブルの原因。
Web制作においてスコープ・マネジメントが大事なのは、ここを曖昧にしておくと、かなりの確率でトラブルが発生するからです。往々にして発注側は「ここまでやってもらえると思っていた」と作業範囲を最大で考え、制作側は「自分たちの作業はここまでだと思っていた」と最小で考える。
これ、本当によくあります。私も何度も痛い目に遭ってきました…。このトラブルを避けるためにもスコープ・マネジメントが大事なことがよくわかります。「ここまでやる」「ここからはやらない」をまず最初に明確にし、関係者全員と認識をあわせておくこと。これだけで、トラブルのほとんどは未然に防げることになります。
WBSをはじめとするテンプレートを活用する
本書では以下テンプレートの作成のポイントや活用方法を解説してくれています。私の場合は、プロジェクトの規模により使い分けていますが、新規プロジェクト立上げ時には、ぱっとこれらのテンプレートを用意するだけで、各段に作業効率がアップしました。そして、日々の業務のなかで少しずつでも使いやすいように、アップデートしていくことが大事だと思っています。
- アジェンダ
- 議事録
- プロジェクト体制図
- プロジェクト・チャーター兼プロジェクトマネジメント計画書
- WBS&スケジュール
- 課題管理表
やっぱり最後は人と人。プロジェクトマネージャーの信念がものをいう。
知識や技術を学び身につけることはもちろん重要です。しかし、それだけでプロジェクトがうまく回るかと言えば、そう簡単なものではありませんよね。最終的にはプロジェクトマネージャー自身がいかに「信頼」されているかが重要になります。信頼されるためにはどんな時もブレない信念が必要であると。信念を持つためにはコントローラーとなって自分の判断でプロジェクトを動かし、「周りが納得した、喜んだ、感謝された」このような価値観をしっかり築いていくことが大切である、と説きます。
読み返すたびに、自分自身の至らないことの多さに凹むわけですが、信頼に足るプロジェクトマネージャーになれるよう、本書を片手に日々精進していきたいと思っています。